研究について

研究の背景

なぜ今、周産期医療の質向上研究が必要なのか?

我が国の新生児医療の水準は他の先進国と比べて高く、1980年代より新生児死亡率は世界最高水準を維持してきています。
一方で、近年では後遺症なき生存や長期入院の回避といった目標に臨床の力点が移ってきています。
現在、我が国の周産期医療が抱えている問題は多岐にわたり、人材育成やチーム医療・地域連携の充実、フォローアップを含めた医療組織体制の構築などの整備は急務の課題となっています。

2003年より構築された「総合周産期母子医療センターネットワークデータ

ベース」によると、児の重症度を調整しても死亡退院率を指標とする極低出生体重児の治療成績と治療内容に大きな施設間差が存在することが明らかとなりました(図1)。また、施設の医療水準の差は入院したハイリスク児の重症度および診療内容を調整してもなお存在することが解析により明らかとなり、それらは診療内容だけではなく、診療資源、医療組織体制等も影響していることが推測されました。

施設格差を是正することで日本全体の周産期医療の質向上が得られるのではないかと考えられました。

 

概要

方法は科学的根拠のある手法を組み合わせ、施設単位のクラスターランダム化比較試験になります(図2)。 介入は『周産期医療質向上プログラム』と称し、
(1)施設プロファイル
(2)ワークショップ開催
(3)改善行動計画の策定・実行
(4)改善行動計画のフォローアップ・支援という4つから構成される(図3)

 

本研究の介入の有効性が検証されれば、介入対象施設をさらに広げることで、診療内容の改善を全国の周産期医療施設に拡大させる可能性が期待でき、各地で周産期医療関係者の人材開発と人的交流の促進が行われ、周産期医療全体のさらなる向上のための有効な施策となります。さらに、このような診療改善アプローチは、周産期医療のみならず、evidence-practice gapの存在する他分野にも応用可能性が期待できます。

 

目的

全国の総合周産期母子医療センターに入院した極低出生体重児の予後には施設間差が存在します。そこで、本研究への参加を同意した総合周産期医療センターおよび地域周産期医療センターにおいて、施設ベンチマークに基づく周産期医療質向上プログラムを使用した介入の実施により、介入施設群の予後が向上するかどうかを検証します。

 

対象

対象施設は全国の総合および地域周産期母子医療センターのうち、過去3年間の診療データが登録可能であり、生児集中治療室(以下、NICU)勤務者全員に本研究への参加の説明と同意が得られ、施設登録時に代表者から承諾の書面が得られる施設である。 対象患者は出生体重400-1500gの児です。

 

方法

介入は『周産期医療質向上プログラム』と称し、施設訪問による双方向性のワークショップ形式を行い、その中で診療内容および医療組織体制の解析結果(施設プロファイル)をフィードバックし、弱点診療項目に関しては根拠と総意に基づく標準的治療の考え方の講義を専門家が行い、以上を踏まえて自施設の改善行動計画を立案・実行するというものをひとつのパッケージとしています (図4)。

 

評価項目

主要評価項目は3歳での障害なき生存率となります。

 

お問い合せ   Site map


TOP